色・心・からだ
色のイメージ

「色彩心理って何?」のところでも触れましたが、色は見る人の心を動かす、何らかのイメージを持っています。このイメージを自分自身のために使う方法はあるのでしょうか。
例えば、人の見た目の印象を色のイメージでコントロールする、これはよく行なわれています。
面接などで真面目に見せたいときに、かっちりしたデザインの紺色の服を着る、スポーツで相手を威圧するため、また自分を鼓舞するために、赤のウェアを着る。これらは色のイメージや人の心に影響する力を利用した使い方です。
誰もが何となく知っているようなこうした方法。まずはそのイメージを少し見てみましょう。

日常で使われる一般的な色のイメージは、主に人間が実際に体験したモノやコト、それに伴った感覚、感情から生まれてきたといえます。
例えば、赤の一般的な連想として、太陽、炎、血、熱など、具象・事象的体験があります。その体験に伴っていた感情や発展した感情である、歓喜、興奮、怒り、愛、情熱などが赤のイメージにつながっていきました。また反対のイメージを持つ青は、空や海、水、日陰の体験、そして冷たさ、静けさ、そこから発展して、知的さや寂しさといったイメージが多いのでしょう。
こうしたものは、具体的な名詞から、感情につながる言葉まで、世界的に共通のイメージもあれば、ある時代の文化や集団だけで、言葉の代わりになるほどの記号化が成立していることもあります。それらが一般的な色のイメージと考えられます。


一般的な色のイメージの例

■ 赤 熱い、強い、危険、派手な、情熱的な、太陽、炎、血、エネルギー
■ 橙 暖かい、親しみやすい、楽しい、安っぽい、低俗な、果物、ビタミン
■ 黄 明朗、希望、暖かさ、幸福、幼稚、騒がしい、子ども、バナナ
■ 緑 自然な、安らぎ、癒し、爽やか、未熟、森、植物、信号
■ 青 冷たい、冷静、神秘的、孤独、静か、知的、真面目な、空、海
■ 紫 高貴な、神秘的な、女性的、妖艶、病気、不吉、派手な、悪魔
純粋、神聖、清潔、無垢、明るい、緊張、平和、白衣、花嫁
■ 灰 曖昧、落ち着き、シック、陰気、不安、抑うつ、アスファルト、ビル
■ 黒 強さ、恐怖、孤独、高級感、暗さ、クール、カッコいい、夜、死

※「史上最強カラー図解色彩心理のすべてがわかる本」より抜粋

また、同じ色の連想やイメージといっても、心理学や治療などで扱う「色の象徴性」、例えば「性格テスト」や「芸術療法」での色となると、「一般的な色のイメージ」とは、重なる部分と異なる部分があり、単純に読み解くことが難しい、まだこれからの研究分野といえます。

さて、色のイメージといっても、どのような色を、どのような状況で見ているのか。そこにもイメージは影響を受けるのではないでしょうか。
私たちは日常で色を見ているとき、ひとつの色だけを見ていることはあまりありません。他の色が並んでいたり背景があるなど、人はたくさんの色と共にその何かを見ています。
また視覚だけでなく、他の五感、触角や聴覚、味覚、嗅覚などを通しても体験しているはずです。
例えば同じ赤でも、プラスティックや金属など硬質な素材の赤、花びらや布などの柔らかな素材の赤、夕日や明りなど光の赤では、そのイメージは異なるはずです。写真で試してみましょう。

いかがですか?
注目している赤の色以外にも、画面にはたくさんの色がありますね。
また、私たち人間は実際に触れなくても、視覚から素材の感触をイメージできるのです。素材の違いは、赤のイメージにも影響していませんか。


Aの配色

そんなに心が動く配色だとは思えないかもしれませんね。
本当はもっとたくさんの色とトーンがありますが、ある写真の異なる色で主な4色を拾ってみました。色をただ並べただけでは何も感じない配色でも、そこに意味あるものが登場すると、その印象は大きく変わります。
では配色の元となった写真を見てみましょう。



さて、私たちは素材が異なるだけでも、色のイメージが変化することを体験しました。
さらに、当たり前のことかもしれませんが、配色や色が、何の色かを理解することで、色のイメージは変化し、感情を生みだすことを知りました。
他にも、香り、音、味など、状況によって色とともに体験していることがあるはずです。
つまり、純粋な色からの刺激である視覚を中心に、それ以外の刺激から生じる五感の総合的な体験や経験が、「美味しそう」とか「美しい」、「気持ちがいい」などの感情を生みだし、そこから色のイメージが作られていくのです。

ここで、そんな色のイメージを少し違った角度から考えてみたいと思います。
主題は、「色を自分のために役立てる方法」です。
先の例のように服装に色のイメージを活用する方法もありますが、色彩の心理として考えるなら、ストレス社会の今、色を「自分のリラックスに役立てる」という発想はどうでしょうか。
このサイトでは代表的な実践方法として、「セルフセラピー」や「イメージセラピー」を提案しており、これは簡単なやり方ですが、自分が何かをしていく能動的なスタイルといえます。
最初に、もう少し受動的な方法を試してみましょう!

色のポジティブなイメージを受け取って、快感を味わい、リラックスをする。この受動的な色の体験は、それほど難しいことではありません。
それは「美しいものをただじっくり眺める」ことです。
え?そんなことで?と思うかもしれませんね。
しかし、本当なのです。
美しさを感じると、実際に人の脳の報酬系と呼ばれる神経系が活性化され、快感が生じると報告されています。ですから、美しさによる色の「ポジティブなイメージ」と、五感の刺激をも無意識に連想できるような映像により、その効果はより高まるといえるでしょう。

では、実際にここで体験してみましょう!
次の「美しい色の世界」ではBGMも聞けるようになっています。美しい色の映像を音と一緒にゆっくり味わってください。
また、ここでの受動的体験をしたら、ぜひ、色を自分のために使う「セルフセラピー」や「イメージセラピー」もお試しください!